■[ISO14001の疑問] 規格にあわない業種について

ISO14001の事務局をやっている人間の中で、一番難易度の高いのは環境側面に関する業務だと思っています。
もちろん、「事務業務において」とつきます。


省エネ法もそうなのですが、ISO14001と言う規格も同様に「研究や開発」といった部門には「合わない規格である」と結論付けます。
規格ではなく、日本の「審査員が悪い」のかもしれませんが、、、、




結論付けた背景として、ISO14001の規格では、適用範囲と側面の特定を含めて「組織が決定する」という物です。
・「著しい」か「著しくないか」か
・「環境側面である」か「環境側面でない」か
これらを決定するのは「組織」であって「審査員」ではありません。
ですが、どうにも日本のISO14001というのは「組織ではなく、審査機関が適用範囲と環境側面を決定するもの」のようです。(という風潮があります)


例えば、工場なんかでISO14001を取得するとします。システムの中で
「環境マネジメントシステムは、当工場における製品の製造から出荷までの業務において環境と相互に影響しうる活動及びサービスの要素などで環境側面を持つ物を適用範囲とする。」
と記載し、適用範囲を決定します。


次に「適用範囲外」の項目について考えます。




ケース1:売店業務の場合
この工場では売店があったとします。「サービスの要素」としては売店の業務は適用されます。
しかし、売店では何を目的としているか?


「工場で作られた製品を売る」事が目的であると、適用範囲は「出荷まで」になりますので、同じ企業内でも「影響を及ぼすことが出来る間接的」に区分される事でしょう。
ただし、環境側面の「候補」として抽出される項目の一つで止まり、環境側面として「特定」については「適用範囲外」として必要ありません。


次に「工場で作られた製品を売っていない」、つまり雑貨やグッツの販売を行っている場合。
「販売」その物はサービスの言葉の範囲内でありますが、完全に「範囲外」となります。
なぜなら、適用範囲で「工場で作られた製品との相互に影響する」であるからです。


ケース2:食堂業務の場合
食堂業務は「工場で働く人の為」の設備であって「工場の製品」との関連性はありません。
なので除外してもかまわないのですが、「製品の製造や出荷の作業を行う人に影響を及ぼす設備」ではあります。
環境において相互に作用するかどうか?を考えてみると、やはり対象とはなりません。




ケース3:広報(工場見学など)の場合
製品を製造する過程において使用される化学物質や排出される廃棄物が、周囲の環境に与える影響において、外部の利害関係者に理解してもらう。
という側面はあります。
一件、適用範囲に入るように見えます。しかし、これも適用範囲外となります。


理由は、
「周囲へ排ガスや薬品の垂れ流しすることで、地元住民に迷惑をかける。」
では
「地元住民に迷惑をかけないなら、排ガスを排出してよい、薬品を垂れ流してよい。廃棄物を適切に管理しなくて良い」
とはなりません。
住民の有無にかかわらず、これらは法的に要求された管理基準や取扱基準等がありますので「実は相互作用はない」となります。


注意する点としては「通常の広報業務」は対象外となりますが「緊急の広報業務」は対象に入る可能性はあるということです。
緊急事態については規格で要求されています。
緊急時の対応について、事前にルールを定めてそれに従い対応を行う必要は、環境とか関係なく企業として最低限必要な部分です。
ただし、それを「環境マネジメントシステム」でやる必要性については必ずしもありません。
また、緊急時の対応は広報業務とは別に考えている組織であれば、「緊急の広報業務」は存在しないので対象外となります。








仮に、これらを「環境側面かどうかの検証しろ」なんていう審査員がいるなら、そもそも論として「適用範囲」を定める意味がありません。
「間接影響についても評価が必要」という審査員も存在します。


でも良く考えてみてください。


規格では、間接の範囲を定めていません。これも組織が決定する項目となります。
では、組織は間接の範囲をどのように定めているのでしょうか?
文書の方には「影響を及ぼすことができる。」という感じで、影響の範囲迄定めているでしょうか?
それとも、具体的に「影響の範囲」を定めているでしょうか?
例えば「顧客との取引は間接影響である」など。
定められている場合はそれに従わなければなりませんが、定められていないのであれば自動的にその範囲は「適用範囲」となります。
だって、一番最初に宣言しているんですから。


それが認められないのであれば、ISO14001の認証取得の範囲から「エリアで取得」という概念はまったく意味がなくなり、審査の中にある「サイトツアー」で「工場内を案内する」事はISOの理念から言うと不適切となります。
間接的な環境側面の可能性がある範囲に入っている「客先までの交通ルートの案内」や「取引先での製品の取り扱われ方や、客先の販売方法(お店)」も「サイトツアー」で案内してあげましょう。
おかしい事は有りません。
製造した製品の「取扱説明書」はこちらで作成していますし、希望小売価格だってこちらで決定しています。
消費者に対して、「使い方」や「お金」というわかりやすい目に見える「影響」を与えているのですから、当然のことです。


ISOの規格P37の「環境」の用語定義には
「ここでいうとりまくものとは、組織内から地球規模のシステムにまで及ぶ」
と書いてあるのですから、文句は言えないでしょう。


とまぁ、際限がありませんから規格では範囲は組織が決定してよいとなっているわけです。
そこに口出しをする審査員は、審査員として不適合となるわけです。




もちろん、これらはうちで依頼を行っている審査機関のみの問題で、他の審査機関であればそんなことはないのかもしれません。
ただ、「○○○ Japan」さんは国際規模の審査機関なんだけどなぁ。。。。。






事務局側としては、ISO14001と言う物は「環境管理システム」ではなく「環境マネジメントシステム」であることを理解しておきたいところですね。
組織としては当然、「規格要求にない部分まで事務作業の実施=事務経費が発生する」ですから、余計な事や意味のない事、つまりは会社の利益にならない事をさせてはいけませんし、審査員がさせるなんてのももっての外です。


ISO14001の審査員の方々。本当に「適切な審査」を実施していますか?
企業側としては「審査員が指摘することは正しい」という風潮と「プロだから間違いはない」という先入観がありますから、今まで「問題になった事はない」としても、それがイコール「正しく適切な審査を行っている」という証明にはならないのですから、審査側としてはどう考えていますか?
適用範囲外まで、環境側面の抽出作業を要求していませんか?




話を戻します。
研究や開発が合わない理由として、環境側面が常に変化し、一定ではない為です。
研究テーマは変化しますし、同じテーマでも実験結果から絶えず変化をします。
「本来業務の環境側面の抽出」
・変化の都度、抽出作業を行う必要がある。
・変化の都度、抽出された項目の改定が必要である。
はっきり言いましょう。
そんな作業を行うこと自体が、環境に悪影響を与えます。
審査員は言いました。「都度、側面は把握しておかなければならない」
把握する必要があるのは法規制であり、環境側面ではありません。
化学物質、高圧ガスと言った項目です。保健所とかにも相談します。
でも考えてみてください。
1.環境側面を抽出するのはなぜですか? 環境側面を特定する為です。
2.特定した環境側面はどうしますか? 環境影響を評価します。
3.評価するのはどうしてですか? 著しい環境側面かどうかを識別する為です。
4.著しい環境側面として特定された場合、どうしますか? 管理する必要があり、状況によっては環境に悪影響を与える内容について、低減する為に計画を立てる必要があります。
繰り返し同じ作業を行うのであれば、マネジメントとしては意味があるでしょう。
繰り返し同じ作業を行わない、短期や期間限定の行動及び活動を「著しい環境側面」として法的要求以外に別にやる必要は有るのでしょうか?
はっきり言って、「ありません」
「著しい環境側面」として、初めから扱わないのに特定作業を行う意味は有るのでしょうか?
環境側面を特定する文書内に、「除外する」と言う文言をつけるとします。これは「本来業務の環境側面を特定しない」と言うことです。
それって、ISO14001を認証取得する意味ありませんよね。

以上の疑問と内容より、合わないという初めの結論に至ったわけです。