まず計測してみようという類の考え方はやめよう。

ISOは関係ないです。しかし、ISO審査員や審査員の天声に疑問を抱かない人にも多い傾向があります。(経験則です)

品証にしろ環境にしろ安全にしろ衛生にしろセキュリティにしろ、何かを始める時は方針やら指標やらを定めると思います。

  1. 環境管理をやろう。
  2. 品質管理をやろう。
  3. 安全管理をやろう
  4. 衛生管理をやろう。
  5. ISOをやろう。

これらは手段であって目的ではありません。その為、方針にもならず指標にもなりません。
管理というのは、管理が必要となったから管理する。というわけです。先に管理が来るわけではありません。

労安法などでは、安全管理体制や衛生管理体制は少数の事業者や特定業務に該当しなければ、(推進者は必要でしょうが)体制を構築してまで管理する必要はありません。

上記のケースでは

  1. 汚染が発生するから(または公害防止管理関連の法的要求による)
  2. 保証期間内に物が壊れるから。
  3. 作業員が怪我をするから。
  4. 職員が病気をするから。(有害とされる化学物質に被爆する環境で作業する)
  5. 持ってないと参加資格がないから

そうならない為に実施するという運用方針であり、方針を「最低限満たしている」という指標(管理の到達点)を定めるわけです。

しかしISOにおける環境管理や品質管理や省エネ法においてはこの「指標」というのはあまり定められていないケースがあり(少なくとも二社心当たりがある)、審査においても審査員から未設定の指標に関する意見もなく(むしろ自分たちの考える指標を押しつけてくるけど。これには手順書が必要とか記録が必要とか)、大抵が実施者が漠然としたものを想定し、形上は組織が指標も決定するという流れになっているかと思います。

実の所、ISOにおいてこの指標が本当にないのかというと「コンプライアンスの順守」という大きな指標があります。
法律においても「何々をしなさい」と明確に指標を提示しているケースもあります。

注:コンプライアンスと法令順守は明確に違いものという認識を持っています。
例えば、コンプライアンスステークホルダーの要求事項を含みますが、法令順守の場合、例えば労安法でいうと委員会を毎月実施するという義務に対し、その内容に対してまで含めて「形式上、開催すればよい」という側面があります。つまり、とりあえず毎月開催しておけば労安法のその義務は順守されますが、コンプライアンスともなれば、委員会を毎月実施させる法的な意図まで順守せよとなり、手を抜くことが出来ないわけです。
手を抜く例としては、労働安全衛生法の下位法に関する安全衛生管理の一部を環境管理で実施している場合、安全衛生管理委員会の審議事項から除外する、管理範囲を意図して一部(請負業者に関する部分など)を除外するなど。
実行面において別体制で業務を行ったとしても、その結果と状況については安全衛生管理上は内容を把握し、委員会などで審議や報告の対象に含めるなどの適切な措置が必要です。なにしろ、別体制で実行するのは組織上の都合であり、法的には労働安全衛生でやれという要求を満たしているのとは別だからです。


紙、ごみ、電気に安全、衛生なんでもそうですが、指標がなければ実施する事に意味はないケースは多々あります。また、その指標についても「意味のある数値」でなければ効果はありません。それこそ、鳩山25%のようななんちゃってになってします。


以上は前置きで本題。

標題にあるように、「まず計測してみよう」と言う人がいる。
具体的には放射能の測定なのだが、この計測してみようというのは私は結構嫌いな部類に入ります。
それは、計測した結果どうするの?と言うのを先に決めないからです。

例えば0.5以上ある場所は注意喚起を行い、1以上ある場合は立ち入りを禁止する。
所内全体で平均0.5以上ある場合は一時除染をしよう。

などなど。

そのような取り決めをせずにデータだけ計測する行為について、その数値が高ければどうするんでしょうか? 数値が高いから騒いでやれどうしようなど相談するのでしょうか?

 何処とは言いませんが、結局計測器を購入して図りたい人が図り、数値は公表しない。数値が高くても何ら対処しないという事で終了しました。
*1
 会社としては、社員に対するリスクよりも事業の継続を優先した結果です。リスク対策を放棄したという言い方もできます。何もやらないことを決定したわけですが、当然それに対する責任を持つ形となります。(ちなみに、ここより福島原発から遠い事業所の計測データは公表するというアンバランスな状況)


とまぁ、放射能を例に出しましたが(実際4とかいう場所もあるという話なんですがw)、単純に「計測する」としても、本来であれば指標の決定と、指標に対するアクションまで決定が必要と言うことであり、ただし票を決定するだけでも実のところは十分じゃないケースもあり特にリスクに関しては)、計測するという言葉と行動は、単純に使用しない方が良いというのが本日の雑記です。これはまぁ計測だけじゃなく、書類や記録に対しても言える事なんですけどね。

色々心配だという気持ちはわかるんですが、まずやってみようという考え方があまりに周りに多くて………

*1:これはこれで非常に酷い話なんですが