夏場の電力供給不足に対する対応

お仕事の話


今年度の夏場の電力供給力不足において、経済産業省が指定契約電力が500KW以上の事業者に対して、電気事業法27条、電気事業法施行令2条1項に基づき、電力の使用制限を行うよう通知書を出した。
また、この通達に対し、違反1回につき罰金100万となるそうです。




それに基づいて、職場でもピーク15%カットの為に、
1.ピークシフト(試験スケジュールの調整)
2.ピークカット
3.省エネ
の三項目の実施を決定する予定を電気作業主任者が立てています。


さて、この「省エネ」なんですが、内容については「不要OA機器の電源OFF」やら「照明間引き」やら「エアコンの温度調整(+2℃)」やらです。


正直な所、これらの活動を「どこまで本気でやる気なの?」と言う疑問しかありません。
「努力目標」なのか「絶対順守」なのか?
そして、「何処まで要求する?」と言う疑問と、「順守しなかった場合の措置は?」という疑問もあります。
まず、基本的な以下の突っ込み

1.不要OA機器の電源OFF

 不要なOA機器なんてそもそも購入している時点で駄目ではないのですか?
 不要なOA機器があるなら、電源OFFではなく廃棄を行った方がいいのでは?
 つまり、前段階として「不要機器の廃棄」がでしょうが。
2.照明間引き

 出来ないでしょ。
 まず第一に、労働安全衛生法で求められた照度に事務室系等は収められています。
 JIS基準よりも高いのは「保守率」や「寿命」による照度低下分を加味しています。
 そもそも「設計照度」に基づいて照明器具は選択され配置されています。
 と言う状況より、「間引き可能」となると
 ・元々過剰な照度設計を行っていた。(設計事務所の能力不足)
 ・基準値よりも低い照度で作業をさせることで、労働安全衛生法を違反する。(労災認定決定)
 以上の2点の問題点が発生してくるのです。
 
 まずは「人感センサー」や「自動調光機能」の設置が先でしょうが。
3.エアコンの温度調整(+2℃)

 皆さん理解していると思いますが、熱中症の問題が発生します。
 WBGT温度というのがあって、
 ・〜21℃:ほぼ安全
 ・〜25℃:注意
 ・〜28℃:警戒
 ・〜31℃:厳重警戒
 ・31℃以上:運動は原則中止
 エアコンの設定温度28℃というお馬鹿な話もあります。
 設定28℃だと、室温はそれ以上になるケースがあります*1
 労働安全衛生法の事務所規則でも室温28℃以下です。
 「設定温度28℃以上」と言う指示は「コンプライアンス違反の指示」であり、それに熱中症でダウンしたらはい、労災認定決定。
 死亡したらどうするんでしょうかね? 労働安全衛生法の違反を指示している時点で業務上過失致死罪に問われてしまいますけど。(恐らく単純な過失致死罪になるのかもね)



 では現実的にどのように対応すればよいのでしょうか?
仮にそれを実施するのであれば、と言う前提で話します。
A.不要OA機器の電源OFF

  「1.」で「不要」が「利用頻度」に変更となりました。
  で、ここでようやく次の話です。
  「使用頻度の低い機器」についてはコンセントを抜いて使用しない環境(待機電力OFF)の状態にして1箇所に保管。そして
  POINT:使用状況を管理する為に持ち出し記録をつけて、使用が終われば取り外して保管場所に保管する。
  と言う事をやらないと駄目です。人間ですから「点けっぱなし」や「そのまま放置される」事まで考慮に入れないと。

  もちろん、手間だという意見はあるでしょう。しかしです。
  「利用頻度が低い」
  のであれば、そもそも「電源OFF」と言う話も出てきません。都度持ち出しの手間も、絶対数が少ないのであれば「その手間を惜しむな。」です。
B.照明の間引き

 省エネ活動その他で「ラビット蛍光灯」を「インバータ蛍光灯」に変更した場合、光束を考慮して「ラビット2灯式」⇒「高出力インバータ1灯式」であれば、照度も設計もほぼ同じになりますが、事業者によっては「ラビット2灯式⇒定格インバータ2灯式」と言う場所も少なくはありません。
 このケースの場合、建屋の「設計照度」が「3割〜4割」程度高くなっていますので、明るさを「3割〜4割」ほど減らしても設計上問題はありませんし、法律違反にもなりません。

 上はあくまで例外というか間引きの余裕が発生していたケースです。
 これ以外の方法としては、「全体照明」ではなく「局所照明」に変更するケースです。作業環境上の照度が基準を担保していればいいという考え方にシフトする事で、「間引きの可能性」を引き出すと言うもの。
 簡単にいえば、人の居ないスペースの照明を消すというもの。
 グレーに近いですが、一応問題はないはずです。
 
C.エアコンの温度調整(+2℃)

 人命に影響を及ぼす項目です。
 そして、これらを設定し周知しても「最も守られない項目」でもあります。
 クレームも半端なく、人による個人差の激しい項目でもあります。
 
 目的は「ピークカット」であり「負荷の低減」です。
 設定温度をいじるよりは、「ピークカット散水装置」を取り付けた方が手っ取り早いと思います。
 大手メーカー(三菱電機とか)は「散水キット」なども販売しています。
 
 他には、「空調使用禁止」にして窓を開放。
 冷風扇等を配付し、夜間で冷凍していた冷媒をセットしてそれを使用する。

 他には夜間電力で熱を蓄熱しておき、昼間に蓄熱した熱を利用するエアコンへの改修。
 
 など。
 
 もちろん、居室の利用状況などを十分考慮して選択する必要はあります。個室であれば冷風扇や扇風機を選択し、フロア系なら散水キットやエアコンの改修などが良いでしょう。
 
 また、他にもプリンタ等の「排熱」が発生する機器を「廊下」等に移動する。
 と言う形で「機器の排熱を減らして負荷を減らす」という行動も有効でしょう。


一応、項目についての突っ込みと意見を記載しました。
ただ、八方ふさがりという言葉があるように、対応策はピークカット、ピークシフトも含めて八案は必要なんでしょうね。

*1:温度センサーが検知する場所が一番暑い場所ではないため