油漏れ対策用スピルキットの準備

本日は話はチラシの裏です。

ことは数年前の話題になります。事務局になってから暫くしたころのお話。

油(潤滑油や発電用燃料タンク、ボイラー燃料タンク等)を取り扱っている事業所さんなんかは、油が漏れた場合の対策として、法的対応(防液堤等の設置や肉厚測定等)の他に
災害発生時の点検マニュアルやら初動対策の為の道具などを準備している所もあるかと思われます。

当然、その様な事態になった場合の対策品なども販売されており、今回は「スピルキット」と呼ばれる物についてです。


まず、今回の記事を書こうと思ったのは、ISO14001:2004の維持審査時に審査員閣下による現場確認*1の際、危険物庫に油吸着マットが適当数保管されている状況及び保管されていない場所などをご覧になり、その旨に関して指摘されたのがきっかけです。
うろ覚えですが「改善の機会」に記載されたと思います。

審査員閣下は
閣下「マットの保管枚数について管理されていない。枚数管理は常識であり、監視・測定できちんと枚数の確認をしなければならない」
及び
閣下「あそこの保管庫には緊急対応品があるのに、ここには緊急対応品がない」「えっ? ある? 同じ数量用意しているのか? 対応品保管の表示がないぞ。これでは担当者しかわからないから駄目だ」
という口頭コメント及び改善の機会は整合性なんたらだったと記憶。

組織では特にこの手の品の枚数やら保管状況やらを管理するルール等はなかった為、その旨の事を伝えたが「(前略)の様なルール作りをするのが当然でしょ。そうしなさいよ」と言う感じで聞き入れてはくれなかった。
審査員でも、月刊アイソスにISO9001の記事を掲載した事もあるほどになると、自らの考えを組織の管理手順に組み込ませ、それを要求事項としようとするんだなぁと、この時は感じました。

今回は、審査員閣下の指摘内容である、ティッシュペーパーの残数を把握し確認しろ」「ティッシュペーパーをおけ」「ティッシュペーパーの表示しろ」と言うアホらしい意見に対する考察はする気がありません。

これらの品も含め、事故時の対応品の管理として、これが必要という漠然の考えの元に保護具類が購入され、配布されておりました。
ただし、これら準備した物が「十分量保管されているのか?」と言う疑問が当初の浮かび上がり、購入及び管理担当の先輩*2に訪ねた所、特に何も考えておりませんでした。

なので、各保管庫にスピルキットを準備し、現在保管中となります。


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緊急事態の対策品の準備に関する考え方

リスク管理の問題なのですが、環境事務局等をやっている人なら当然、油の漏洩した場合の措置について取り決めや対応品を購入しているでしょう。
また、「最悪、一度にどの程度の漏洩量があるか?」という、数量の計算もしてあって当然です。
そしてさらに言えば、「漏洩=公害の発生」とはなりません。「漏洩物の特性と漏洩量から公害となるかどうか?」という検証*3を経て、ようやく「公害に繋がる」等の結論に達します。

「漏洩=公害の発生」と言う認識の方は少なからず存在します。
ひどい時は「リスク=公害の発生」と言う認識の方も存在しますし、さらにひどい時は「物を持っている=公害の発生」という方すらいます。

スピルキットを準備する際、回収する油や薬品類*4を考え、それに合わせて物品類を準備するのが当然です。
正直な所、閣下がこの手の意見を言う事がなかったのが非常に残念でした。

危険物庫等に薬品類を保管する場合、中に保管してあるものの中で一番大きな保管容器の容量が最大漏洩量とする考え方があります。
(ドラム缶であれば最大200Lの漏洩となるでしょう。ドラム缶より下であれば、25Kg缶あたりになります。)
さすがに危険物保管庫の最大保管容量がすべて一度に漏洩するという考え方は現実的ではありませんから。

各保管容器用に防液堤等のトレイがあり、十分な受け量が期待できるなら、スピルキットを準備しないという考え方もあります。


<!−−ここまで−−!>

上の考え方が正しいかどうか? というのが本日の本題(というか命題)です。特に答えが出たというものではありません。考慮中の話題です。


一箇所あたりの漏洩量を算出して、その漏洩量に合わせてスピルキットを準備したのですが、保管箇所が複数ある場合、「保管箇所の中で一番漏洩量の多い場所に一つスピルキットを置いておき、他の場所で漏洩したらそれを持ち出して使用してもよいのではないか?」という疑問が生まれました。
すでに購入して保管している物を取り下げる気はありませんが、一度に複数個所同時に漏洩事故が発生する確率なんて、天文学的数値です。

しかし、大規模災害が発生した場合等は複数個所での漏洩はあるかもしれません。その場合、一箇所あたりで漏洩する保管容器が一つであるという保証も同時になくなり、現状のスピルキットの容量では不足します。
保管量を増やせばいいのですが、その場合は保管場所のスペースなどの問題も当然発生します。
かといって最小で考えると、東電の原発事故と言う例もあり、不足と感じます。保管数量毎に考えると下記の順番になるのかなぁと。

1.事業所で総数量に対応する
2.保管場所の総数量に対応する。
3.全保管場所の総数量+次席総数量+三席総数量に対応する。
4.保管場所毎の最大缶数量+次席缶数量+三席缶数量に対応する。
5.保管場所毎の最大缶数量に対応する。
6.全保管場所の最大缶数量+次席缶数量+三席缶数量に対応する。
7.全保管場所の最大缶数量に対応する。

1、2は現実的ではないと思っております。
3も結構難しいかなぁと。

現実的な選択肢としては4以降あたりで、7を選択すると、なにかあった時は福島第一原発の時の様な電源全喪失と同じで相当叩かれる可能性が出てきます。
二重のセーフティーネットと言う意味合いでは5〜6あたり。確実なのは4あたりになるのかなぁ?と考えており、結果としては現状の「5」では不足しているかなと言うものです。

ただ、倉庫や危険物庫の「外に出る」部分が「緊急性が高い」だけで、倉庫の外に出ていかなければ*5緊急性はないわけで、、、と言う考え方もあり、なかなか適切な保管数量と保管準備品と言うのは難しいなぁと思うわけでして、、、。

出来れば保管量は少なく出来てかつ外部に対して問題なく説明できて納得してもらえるボーダーラインってのは、なかなか難しいなぁと。


本日は以上(チラシの裏でした)

*1:サイトツアーと呼ばれている

*2:ISO事務局

*3:ISO的に言えば環境影響評価

*4:気化したり大気放出される物はどうしようもないですが

*5:封じ込めと言う考え方の導入をすれば