I環境と品質は統合できる?

EMSの審査で、環境だけでなく品質の審査も実施している審査員にあたり、かなりの口論となりました。
その背景もあって、今回の表題となります。
まず、結論より


「できません」





ISO14001と言うのは、その趣旨及び方向性は「予防」
ISO9001と言うのは、その趣旨及び方向性は「是正」


ISO14001と言うのは、その範囲と対象は「エリア」
ISO9001と言うのは、その範囲と対象は「製品」


分かる人はこれだけでわかる事でしょう。


タイトルについては、規格の目的がそれぞれ違うため、環境と品質を統合するとなれば、歩み寄りが必要となるでしょう。
環境に関しては、環境側面に関する事は製品に限定する。事業活動と言う範囲を捨てる。
また、間接影響はない物とする。
予防は、過去に起きた不適合に関する事に限定し、想像(妄想)の域を超えず、確率といった数値か出来ない事故等に関する予防はやらない。
確率といった数値化できたとしても、それが一定レベル(例:1%以下)なら無視する。


というならね。ですが、それではかつての規格内容を無視する事になる。上記の内容で十分であれば、誤った要求をしていた事になる。無駄なリソースを食わせていたことになる。
普通はそれは認められません。特に国際規格なら。だから規格化なんて出来ないんじゃないの?
やってしまえば、ISOやJIS規格の信用性や信頼性がなくなりますよ。




しかし世の中には、そんな実運用を考えない事を考えて規格化する奴は存在するようです。


「ISO 31000」
というのがそれ。


この規格の範囲は、品質管理、環境管理、情報セキュリティー、事業継続他のマネジメントシステムを包括適に管理するアンブレラ規格になるとの事。




もうね、馬鹿としか言いようがない規格です。
それぞれが「守る物」が違うのに、無理やり一つの統合した規格で管理するのは愚行以外なし。


趣旨が「リスクマネジメント」なので、作成・運用する事は出来るでしょう。
ただし、それはISO9001やISO14001他の上位ではなく、別に独立した物として割り切る必要はあります。


下位と位置付けている規格の要求事項には絶対に不具合が発生するのは、上文で説明済みですし、上位規格と言う位置づけをしてしまう場合、この規格の要求事項は下位規格の要求事項をすべて網羅していなければなりません。
網羅していなければ、下位規格の要求事項は「何の為にこの規格では、それを要求していたのか?」という根本問題になるからです。そしてそれは、無意味無駄な要求をして、組織のリソースを食潰していた悪質な規格となるからです。
「上位規格は良質で下位規格は悪質です」なんてのはあり得ないですし。








ただ、品質と環境の統一規格は過去にも話が上がっていた。
しかし、現実には統合された規格は結局出来上がらなかった。
もしかしたら、このISO31000に変更となったのかもしれません。
ですが、この規格はポシャルでしょう。理由は上記を読んでいただければわかるかと。




環境や品質や情報セキュリティを忘れて、あらたら「リスクマネジメント」を作る場合についても、「難しい」と言うのが回答です。
そもそも、組織にとって「何がリスクになるのか?」と言う部分は、職種や業種、社内規則や人によって千差万別だからです。
どうせ、環境と同じように「何をリスクとするかは、組織が決定する」という内容になるのは目に見えています。




「何をどうするか?」
「何を対象にするか?」
これらの決定を「組織」に委ねるような規格を「認証するメリット」は存在しません。
だって、「それらが適正かどうか」なんてのを、結局「組織が証明し説明する」必要があるのですから、規格を認証した所で「それらを説明しなくて良い」なんて事にはなりません。
また、認証した所で、認定組織(日本規格協会含む)が
「この会社はリスク管理がしっかりされている事を確認した。それを信頼してかまわない」
なんて事の「証明書」は発行してくれません。
「規格の要求事項に適合している」であって、「組織の決定したリスクが適切である」事を証明してはいないのです。




以上より、現状で「最適化」されている組織のあらゆるリスク管理を、このような規格に合わせた物に変更する行為その物が「リスク」となってしまいます。




それぞれのリスクや管理状況を「見える化」する行為については意味がありますが、「規格」「要求事項」などで縛りをかける意味は「全くありません」




以上の理由より、「統合できない」となるわけです。




もちろん、「類似する部分を共有化」は可能ですので、そこはお間違いないように。




余談ですが
以前にも申し上げたように、ISOやそれに関連する協会は、品質や環境保全を「保障」するものではありません。
よってこれらの規格が出来たとしても、認証する「意味は存在しない」のが回答となります。