内部監査員の力量

長文の割には当たり前の結論になってます。ですのでいきなり結論のそうまとめ


内部監査員が、通常業務の範囲で事業所又は事業所のために働く人であれば、「要領」や「手順書」等で、改めて「力量の要求(資格条件)」を求める必要はない。
ただし、その範囲に含まれない監査のための人事を実施する場合は、力量の要求が必要となる。


以上。

以下は駄文です。


当方の要領には内部監査員の資格要件というのがあります。

外部研修期間で二日間以上の研修を受けた者又は同等の社内研修を受けた者

という事もあり、本当に必要だったのかどうかは置いておくとしても、内部監査員になる為に研修を先日受けたというわけです。

そして、現在当事業所の職員でこの研修を受けた人数は20人近く在籍*1しています。

では実際、このような資格要件や力量の要求が必要なんでしょうか?

規格では監査について下記の様に要求しています。

規格 P85

次の事項に対処する監査手順を確立し、実施し、維持すること。

―監査の計画及び実施、結果の報告、並びにこれに伴う記録の保持に関する責任及び要求事項
―監査基準、適用範囲、頻度及び方法の決定

 監査員の選定及び監査の実施においては、監査プロセスの客観性及び公平性を確保する事。

「事前に」という文言もなければ、「文書化した」というのもありません。
力量についても要求はしていません

ただし、附属書Aには

附属書A P153
A.5.5 内部監査
環境マネジメントシステムの内部監査は、組織内部からの要員によって、又は組織の為に働くように外部から選ばれた人によって実施する事が出来る。
いずれの場合にも、監査を実施する人は、力量があり、公平かつ客観的に行う立場にあると良い。中小規模の組織では、監査員の独立性は、監査員が監査の対象となる活動に関する責任を負ってない事で実証する事が出来る。

このように、力量について言及しています。

また、文書化についても用語及び定義には

規格 P45
3.1.1 内部監査
組織が定めた環境マネジメントシステム監査基準が満たされている程度を判定する為に、監査証拠を収集し、それを客観的に評価する為の体系的で、独立し、文書化されたプロセス。

という風に記載されており、監査プロセスについては文書化することを暗に要求しています。*2


また、規格要求の解説本にも

P143
また、監査員の定義として”監査を行う力量を持った人”とされているので、監査員選定にあたってその力量の評価が必要になると思うが、この点についてはISO9011(JIS Q 19011)を参照する事をお勧めする。

では、ISO19011ではどのように記載されているのか?を見てみます。

3.14 力量
実証された個人的特質、並びに知識及び技能を適用する為に実証された能力

とある。続けて

7.監査員の力量及び評価
7.1 一般
 監査プロセスに対する信用及び信頼は、監査を行う人の力量に依存する。この力量は、次の実証に基づいている。
 ―7.2に示す個人的特質
 ―7.4に示す教育、業務経験、監査員訓練及び監査経験によって身に付けた、7.3に示す知識及び技能を適用する能力
 監査員の力量の概念を図4に示す。7.3に示す知識及び技能には、品質及び環境マネジメントシステム監査員に共通のものも、それぞれの分野に特有の物もある。
 監査員は、継続的な専門能力の開発及び監査への定期的な参加によって、自らの力量を開発し、維持し及び向上させる。(7.5参照)。
 監査員及び監査チームリーダーを評価するプロセスを7.6に示す。

とまぁ、このように記載されており、以下に個人的特質、知識及び技能、教育、業務経験、監査員訓練及び監査経験、力量の維持及び向上と続く。

長いので文書を転写は、別途評価すると言う事で。

個人的特質なんて、この文書を見た時、教育委員会の委員の選定基準を思い出しました。
民主党が耳触りのよい語呂を並べて中身が全くない言葉で遊んでいるだけの内容です。

まぁつまり、この辺りは犯罪歴や罰歴が無ければ誰でも良いという事です。

このJIS規格で要求されている力量内容を全て満たし、客観的にそれを証明できるなら、「内部監査を必要としない」でしょう。
なぜなら、「内部監査」というチェックを用いずとも、普段の「チェック」で十分だからです。
基準を満たしたうえで「内部監査」が必要な組織の場合、必要と判断した「根拠」を重点的に審査することで、改善する事が可能となるでしょう。
*3


話を戻します。
今までの話は、当方の所ではこのように要求されており、規格等ではこのように要求されているという話でした。

では実際に、内部監査員は本当に「力量」を必要とするのでしょうか?

一般的な話でいえば、「監査を必要とする組織又は活動であるか?」という点が大きなポイントだと思っています。

自営業や農業やってる人なんて、そもそも「PDCAなにそれ?」ですし、セコムやビルワークといった警備会社がEMSの内部監査なんて必要ないでしょう。
警察、消防、医療なども同様です*4

仮に必要だとしても、ISO19011の様な複雑で高度な力量は「不要」という認識です。*5
JIS要求の審査訓練時間40時間とか、品質又は環境の業務経験二年以上とか、なんかもうバカらしくて、、、、

JIS19011で要求されている「力量」を必要とする背景がわからない以上、内部監査員に対してそのような力量の要求は不要という結論しかありません。実際、規格の要求事項では要求されていないのですから。


とまぁ、ここまでは「力量がいらない」という結論の話です。


ここからが「力量が必要」という話です。

「力量が必要ない」といっても、アルバイトやその辺の高校生にやらせるわけには行きません。
という時点で、「ある程度の力量(資格条件)」は必要なのは間違いありません。

だからといって、「法的に力量を要求を満たした人」では、手痛い目にあいます。

例を言えば、当事業所には、有識者(笑)と分類される、(一応選挙で投票された)政治家が視察(という名目で)に来られて、様々な(頓珍漢で救いようのない)指摘を下さり、組織の活動を(悪い方向に)改善してくれます。

例を挙げれば、某有識者による指摘で、セキュリティを強化しましたが、その有識者が一線を引き、別の有識者になった時に「何でこんなにセキュリティいれてるの? 無駄だよね。誰が入れろといったの? バカなの? 死ぬの?」という意味的な指摘をいただき、数千万を超える金額を“無駄に”し、さらに“システムの運用で”無駄金を○○千万という金額の運営費を消費し続けているという、、、

なので、力量があったとしても、業種の違う、分野の違う「素人」がやると、まともな審査は出来っこないという結論です。

要求するなら「その事業所での勤務年数2年以上」とか、そっちの方が遥かに有益な内部監査が実施できると思います。
一般的な話で言えば、、、、ですが、、、、*6


結論のそうまとめ
内部監査員が、通常業務の範囲で事業所又は事業所のために働く人であれば、「要領」や「手順書」等で、改めて「力量の要求(資格条件)」を求める必要はない。
ただし、その範囲に含まれない監査のための人事を実施する場合は、力量の要求が必要となる。

*1:他事業所に移動した人を含めると30人以上になる

*2:「要求事項」に文書化を要求していないとして突っぱねることも可能ですけどね。 ISO90011を呼び出すのも手でしょうし

*3:ここで言う「内部監査」とは、法的及びステークホルダーからの要求で監査及び検査の実施を求められている場合は除きます。

*4:そもそも論としてEMS活動が必要でない&要求されていない組織や業種は必要ないんですが

*5:素人が官僚のお偉いさん向に適当に作ったような内容ですし

*6:当事業所はなぁ、、、それが該当しない系統のところだからなぁ、、、、