ISO事務局の迷走

拝啓 放射能の候、東北及び関東の皆様におきましては、ますますご心労のこととお悔やみ申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

さて、かねてよりご懸案申し上げておりましたISO事務局代行サービスを来月開始する運びとなりました。
長年ご愛顧を賜りました管理手法をベースに開発したISO事務サービスは、皆様のISO運用管理に一層貢献するものと自負いたしております。

つきましては、下記の通りISO事務業務発表会を行いたいと存じ上げますので、部長はじめご関連部署の皆様方のご光臨を賜りますようご案内申し上げます。

どうか、今後ともお引き立て賜りますようお願い申し上げます。貴社のますますのご発展を心より祈念申し上げます。

                      記


日時: 2111年11月11日 午前10時から午後6時まで
場所: ISO大会議室
内容: ISO事務局代行サービスの全容ご紹介

なお、同封いたしました葉書でご来社予定時間をお知らせいただければ、ISO事務局を待機させますので、誠に恐縮ではございますが、11月11日までにご投函くださるようお願いいたします。

え〜 特に意味はありません。単に「拝啓」で始めたいと思った結果、変な方向に言った結果となります。

さて、標記についてです。
世の中には「ISO事務局」という言葉が存在します。存在するのは言葉だけではないようです。

当事業所にもISOの事務局は存在します。

まずは事務局の位置づけについて整理しなければ話になりませんね。

他の事業者ではどのような位置づけかは不明ですが、当事業者*1の各事業所にはそれぞれ事務局と呼ばれる団体(?)が存在しています。
特長的な所としては、「部門」や「課」及び「係」といったもので規定されていない所でしょう。


所属する課の業務の他に特定の業務を「併任している人達の総称」として「事務局」という言葉が使用されるケースもあれば、「統括」と呼ばれる係が存在する場所では、そこの所掌範囲で実行されていたりもします。
ISO事務局もこれに習う形で存在しており、ISO事務局という物が特別という位置づけでないのが特徴です。

この事務局の特徴としては、「部門」や「課」及び「係」といった、組織体制の縦割り線を跨いでグループとして活動を行っているケースも存在する点でしょう。*2

プロジェクトグループそのものの場合と、プロジェクトグループの活動取りまとめを行う人達の場合がイメージとしてはしっくりきます。

なので、ISO事務局の他に、安全に関する事務局や、衛生に関する事務局、及び一般公開の事務局という物も存在し、大抵は一人から三人で構成されています。

具体的な業務内容について、「ISO事務局」というくくりだとイメージがつかないでしょうが、「品質管理事務局」「環境管理事務局」と名称を置換してやれば、イメージしやすいと存じます。
それでもわからないのであれば、「管理責任者の業務代行者」という言葉に置き換えてみてください。
まだイメージできないのであれば、次に「会社に秘書は必要か?」「政治家に秘書は必要か?」という質問をします。
秘書=事務局と置き換えてください。

それぞれ微妙に位置づけは違いますが、どれもが正解であり間違いです。どれ一つとってみても、まったく同じ形態の会社などは存在しないのですから。
つまるところ、事務局という位置づけ一つとっても、様々な形態が存在し、事務局という名称を利用しているだけで他の名称でも使用されるというわけです。

ここまでが事務局という物の位置づけの話になります。

次に組織にとって事務局が必要かどうか?です。これをきちんと明確化しなければ、ISO事務局の必要性を含めて事務局の業務範囲は語れません。

事務局を必要とする人達はどなたでしょうか?

ISOで言えば、管理責任者の下に所属しその業務をサポートする人は居ませんか?
省エネ法のエネルギー管理体制では、エネルギー管理統括者の下に位置する企画推進者又は企画推進者の下で働く人は居ませんか?

つまり、事務局とはシステムの管理者又はプロジェクトの推進者が「必要としなければ存在しないグループ」であるとも言い換えられます。

経営的観点から言えば、業務に携わる人が少なければ少ないほど人件費は抑えられます。
まず基本がそこにあり、その人達の人件費はいくらか? 業務内容は、人件費に見合ったもか?人件費の安い下っ端にやらせた方が、業務単価が抑えられる。
簡易業務は派遣や請負にやらせて、専門業務のみを管理者にやらせると同時に、他の専門業務も並任させよう。
で、結果トータルで人件費が安くなる。
こいつは、会計監査の基本ではありますが、必要としないから事務局は不要とは即ならないのも現実です。

とまぁ、様々な要因によって「組織によって一番メリットのある状態の結果」で事務局の要・不要が決定されるのが理想の経営状態です。

現実はもっとどろどろしてますよ。
行政関係はまず人の枠が先に来て、尤もらしい理由をつけてその枠を広げて、無意味にその枠に人を配置するんですから。
これは「天下り人事」の基本です。つまり、天下りの実態はメディアで言われている範囲にとどまらず、もっと下の範囲でも存在するということです。
「再雇用制度」の弊害もあるんですけどね

以上が、事務局を必要とする背景です。
ここでは理想状態で必要となった場合で話を進めます。

次は事務局の所掌範囲ですが、わかりませんしこの段階で言えば、所掌範囲について問題はありません。
なぜなら、やるべきことははっきりとしているからです。
そして、特徴として各事務局がその活動範囲において迷走することもそうはありません。
業務範囲そのものは、文書化された形で明確化されているのが一般的だからです。

この範囲が明確化されていなければ、ISOに限らず迷走します。
といいますか「お前の仕事は何?」と聞かれて答えられないようでは、惨めですよ。
もし、明確化されていないのであれば、ちゃんと調べるなり明確化を上進した方がよろしいかと。
じゃないと「お前、仕事してないじゃん」とか「お前、いらないよ」と言われても仕方がない状態になります。

では本題です。

ISO事務局は迷走するのか? そもそも迷走しているのか?

迷走しているかどうか?をまず考察してみましょう。

このあたりは、同氏たちに語りつくされた感じもありますが改めて整理したいと思います。

1.組織の要求事項に対するシステムの仕組みと、ISOの要求事項に基づいて構築されたシステムに整合性がない場合。
2.会社の組織体制とISOの組織体制がリンクしていない場合。
3.会社の経営体制がPDCAサイクルという形態ではない場合。
4.組織が定めた方針及び目的・目標に対して、ISOがそれらを方針及び目的・目標と認めない場合。
5.ISOの要求事項が、組織の経営にメリットを与えることを客観的に証明できていない場合。(規格の有効性及び実効性の問題)
6.ISOを認証することによるメリットを、JABやUKASといった組織が提示及びそれを保障していない為。(規格の有効性及び実効性の問題)
7.ISOは国際規格と銘打ってはいるが、規格としての体をなしていない。
8.ISOの認証組織そのものが、ISOの規格要求を満たす仕組みになっていない。(現状、満たすことは不可能である)

このあたりが、私が考える迷走している背景です。ただ、このあたりは一言で言い表すことが出来ます。

「ISOの価値」

株や証券に置き換えるとわかりますが、それを発行している会社や組織は、株や証券の価値が高いように見せたいわけです。理由は、それが資産価値に繋がるからです。
紙くずになれば当然、資産価値が下がるわけで、組織は躍起になって価値をあげようとします。
しかし株や証券は、市場原理の法則に従わざるを得ないわけですね。

価値がないものに「価値があります」と主張する物だから空回りし、結果迷走すると言う構図が出来るわけです。
ISO事務局は、そんな価値のないものを「価値があるもの」として取り扱うわけですから、様々なところで疑問視されのは当然の帰結ではないかと考慮するわけです。

本日はこんなところで、機会があれば「ISOの価値」又は「ISO事務局の所掌範囲」については、長文に成るでしょうから別の機会にしたいと。

*1:及び、私の知る及び所属していた事業者の範囲では

*2:もちろん、縦割り線の中でしか活動できなじむ局も存在します