手順書の意味は?(その1)

まず、ISOの規格は手順書を要求していません。

しかし、審査員閣下の中には手順書を要求するケースがあります。
この辺りは以前、外部文書の取扱方法の決定は必要?で述べておりますが、「確実にする」という見解が「文書化」の意味合いを持つという解釈論がISO業界の中では通っている為のようです。

今回の話題はそこからさらに派生し、審査員が「手順書を要求した」というケースの話です。

評価しなさいとルール化されており、様式があり、それには評価結果を示す「適・不適」という欄があります。
という状況での話です。

閣下:「この書類の提出記録を見せてください」
マサ:「こちらです」(受領印のある書類を見せる)
閣下:「この書類の中身の記載は、だれが実施していますか?」
マサ:「私が実施していますが、、」
閣下:「書類の記載内容の情報は、どのように取得していますか?」
マサ:「この情報は契約にかかわる伝票から取得しています。ですので、契約担当に依頼して情報をもらっています」
閣下:「ではこの情報は?」
マサ:「その情報は保全報告書に保存されている情報をまとめています」
閣下:「なるほど。ではそれらの情報がどこにあってどのようにまとめるかのルールはありますか?」
マサ:「いえ、ありません」
閣下:「それはいけない」
マサ:「え? 何故ですか?」
閣下:「もし、あなたがいなくなったらどうするんですか?」
マサ:「業務を引き継いだ人が実施するだけです」
閣下:「その時、同じような手順で情報を取得して実施されますか?」
マサ:「手順は手段ですから、結果として同じ情報に行きつければよいのでは?」
閣下:「それではいけません。同じ情報に行き着くという根拠はどこにあるんですか?」
マサ:「元々、どのような情報が必要だという要求があるんですから、提出する書類にはそれを満たす必要性が組織にはあるのでは? それが根拠です」
閣下:「それは根拠とは言いません」
マサ:「なぜ?」
閣下:「他の方法で取得した場合、情報が確実に取得できるという保証がないからです」
マサ:「ですが、前の担当者から引き継がれておりませんので、他の方法で私は取得して実施しておりますよ?」
閣下:「そういう問題ではありません」
マサ:「えっ? 今ほかの方法って、、、」
閣下:「それはたまたまです。偶然うまくいったケースで論じても仕方ありません。」
マサ:「…………」
閣下:「ISOは、そういった偶然をなくし、一定の品質の出力を出すことを、確実にしろと要求しているのです」
マサ:「(ISO9001の話になってね?)」
閣下:「いいですか、マサさん。だれが実施しても同じように出来るための作業手順が必要なのです。だれが実施しても同じ回答が得られなければなりません。その為の仕組みづくりをしなさいとISOは言っているのです」
マサ:「規格では手順書はそれがなければ実施できない場合と限定されていますよ」
閣下:「実施できるという保証がないでしょう!!」
マサ:「いや、だから今実施できていることが保障になっているでしょ」
閣下:「わからない人だな。今のことではなく先のことを言っているのです」
マサ:「はあ!? 今の手順が未来でも通用するっていう保証すらないでしょう」
閣下:「世の中には予期しない出来事で急に人事が変更することだってあるんです」
マサ:「つまり、私が死ぬと」
閣下:「事故でも何でもいいんです。そういった不慮の事態に備えて手順書を準備しておかなければならないといっているのです」
マサ:「・・・・・・だれがやっても同じ出力の話じゃ?」
閣下:「同じことです。人事問題で別の人がそれを実施する必要があるとき、用意された手順があれば問題なく引き継げるでしょう。なぜわからないのですか」
マサ:「主張がわからないといってません。が、そんな要求はないでしょう?」
閣下:「あります。4.4.4項の文書類で運用・管理を確実に実施するために組織が必要と決定した、記録を含む文書とある。」
マサ:「ですが必要と決定していませんよ」
閣下:「私の主張したリスクが潜在的に存在するのに、組織はリスクを放置するんですか?それは不適合になりますよ」
マサ:「主張されたリスクが存在すれば、業務上の不具合になるかもしれませんが、要求そのものはそこに存在し登録され、それに答えなければならないというのは明確化され監視されているから、要求を満たせないということはありませんよ。なのでおっしゃってることは要求を満たせないというのとは別でしょう?」
閣下:「その要求を確実に満たすという(以下略」
マサ:「満たせてると言って(以下略」
閣下:「必要量の情報を提出(以下略」
マサ:「その時の担当者が自分なりの手順を確立させ(以下略」
閣下:「そんな手間暇を(略」
マサ:「ある程度は自ら行動させなければマニュアル人間に(以下略」
閣下:「それではだめだと(以下略」
マサ:「手順がなければ満たせない場合に手順書を準備すればいいだけでしょうが!!」

と、お互いひかぬ状況が続き、結果

観察事項
組織が影響力を及ぼすことが出来る環境影響(法的及びその他の要求事項の対応含め)を評価する為の手順について、現行の手順で充足しているかについて、検討いただく余地があります。



ISOにおける手順書の位置づけと組織の考える手順書の位置づけはどうにもイコールではないようです。

この手順書の問題について、何をどこまで記載するのか?という問題も孕んでおり、この手の議論は審査員よりもISO事務局とよく衝突します。
この議題につきましては次回に持ち越しということで本日はこの辺で


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